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EXCECIEL x 遠州流茶道 小堀宗翔 こぼりそうしょう

特別コラム

茶道と葡萄酒

日本でのワインは江戸時代から

茶道とワインについて・・・という事でお話をさせていただく前に、
まず、遠州流茶道について簡単にお話させていただきます。

遠州流茶道について

遠州流茶道は江戸初期に活躍した小堀遠州を祖とし、当代13世小堀宗実家元に、格式ある大名茶道として受け継がれています。
小堀遠州は、名古屋城・大阪城天守閣・駿府城などの作事、南禅寺金地院などの建築・作庭の指導者、千利休、古田織部と継ぎ、徳川家の茶道指南役などと、非常に幅広く活躍した人物です。また、茶道具の目利きとしてもしられており、それは日本にとどまらず、海外への交流も多くありました。
そこで茶道とは、一見関係のなさそうなワインとのつながりを、江戸時代までさかのぼっていきたいと思います。

茶事の会席の中で振る舞うお酒

まず、茶道といえば、「お菓子を頂いてお茶を点てる」というお稽古を想像する方が多くいらっしゃると思います。
正式なお茶会(茶道)は「茶事」(ちゃじ)と呼ばれ4,5人のお客様に炭点前・会席(料理)と濃茶・薄茶でおもてなしをします。単純にお菓子とお茶を頂くだけではなく、日常と切り離された空間で、庭を愛で、心を静かに茶室にはいり、そこで食事やお酒を通して器を愛で、主題となるテーマにそって茶道具が取り合わされ最後の最後に一服のお茶を頂くというドラマが展開されるのです。その茶事の会席の中で、お酒も同時に振舞われるのですが、本来日本酒を出すところを、流祖小堀遠州公はワイン=「葡萄酒」を出したという記録が残っています。

遠州公の生きていた17世紀前半に、お茶の道具やお料理などを記録した「会記」に「ふたうしゅちんた」と記されています。これは「染めたワイン」という意味で、スペイン産のもので特に、アリカンテとロタのものをいうそうです。またこのワインは、他の赤ワインを濃く染めるための薬用としても使われていたそうです。当時、葡萄酒は貴重なお酒であり、出島のオランダ商館に、飲料や接待用、贈呈用として、オランダの東インド会社によってもたらされていた一部が遠州公の手元にわたっていったと思われます。

実際の記録を見ると、正保3年(1646年)8月2日に「御茶の前二 葡萄酒 染付徳利 へぎに猪口三ツ置テ出ル」という会記が残っています。
簡単に読み解くと「八月二日の晩、小堀遠州は後藤顕乗と、松屋久重の二名の客人を迎えてのお茶事。お抹茶を出す前に、染付の徳利に葡萄酒(ワイン)をいれて、そこに三つのお猪口を添えて出しました。」ということです。

遠州公のサプライズ

ここにはお茶の面白さが凝縮されています。
冒頭、染付の徳利に葡萄酒を用意した、つまり陶器の器にワインを入れるという事は、中身がわからない。お茶事では通常お酒(日本酒)が出るわけですので、陶器からお酒を注いだ時に葡萄酒が出てくるサプライズ。
客人2人に対して「お猪口3つ」の準備。これは、ワインを用意したサプライズを亭主たる遠州も一緒に楽しみたいとするユーモア。そんな記録です。

茶道と葡萄酒

またお抹茶とワインの共通点も多くあるように思われます。
一つは「銘」、ワインにもそれぞれ葡萄の種類や産地、作者によって名前があるようにお抹茶にも「銘」と呼ばれ名前を付けます。「お茶銘は?お詰めは?(産地)」などと茶会を通して由来を楽しむのです。
お抹茶は茶葉を摘んで蒸した後に乾燥させ、茎や葉脈を除いてから細かく砕いた碾茶(てんちゃ)を石うすで挽いて作ります。遠州流のお抹茶は「○○乃白」「○○の昔」という銘が多くつけられています。その名前の由来は、千利休の弟子の古田織部が、通常の作り方のお抹茶よりもっと鮮やかな緑色のお抹茶を作りたいという事で、お茶の葉を蒸さずにさっと茹でて、乾燥させて鮮やかな緑色の「青茶」を誕生させました。

その古田織部を継いだ遠州公は、青茶に対して従来のお抹茶の製法に戻したことで、古田織部の「青」に対して遠州の「白」という事で「白」「昔」という銘が多く使われているのです。

茶道をご存知ない方でも、ワインをいただくと同様の観点でお楽しみ頂けると思います。
お抹茶は点てる人によって一服一服味が全く変わります。その日の湿度、温度や器様々な条件によって味わいが出ます。深い味、長い道、ワインにも大変通じる部分があるのではないでしょうか。

遠州流茶道小堀宗翔(こぼりそうしょう)

遠州茶道宗家13世家元次女。元ラクロス日本代表。現在は社会人クラブチームMISTRALに所属。
家元の元で修行後、茶道の普及に努めながらラクロスの現役選手としても活躍。スポーツと文化の融合・発展、アスリートに向けたアスリート茶会など新たな試みで注目を集めてる若手アスリート茶人。

小堀宗翔オフィシャルサイト
https://kobori-sosho.com/